生体センシングしてみる~脈波編(回路設計)~

前回紹介した脈波センサの抵抗の選定とフィルタ回路と増幅回路の設計をしていきます.

 

 

フォトリフレクタの設計

フォトリフレクタは赤外線LED+フォトダイオードで構成されているので,

まずLEDから設計します.

一般的な光るLEDなら

照度➡順電流➡順電圧

の順番に決めていけば,欲しい照度になる電流が流れるような抵抗を決めることができるけど,赤外線は目に見えないので限界まで明るくするように設計.(この方が精度がよくなるんじゃないかと期待)

データシートの絶対最大定格(Absolute Maximum Rating)を見ると,順電圧(Input-Forward current)が60 mAなので40 mAを目標の順電流とする.

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データシートはこちら

http://akizukidenshi.com/download/lbr127hld.pdf

電圧と電流の関係のグラフ(Forward current vs Froward voltage)から順電流40 mA,温度25 ℃のとき順電圧1.3 Vが得られる.

$$R_D=\frac{V_{CC}-V_F}{I_F}=\frac{5.0-1.3}{40\times10^{-3}}=92.5\,\mathrm{[\Omega]}$$

ってことで赤外線LEDに使う抵抗値は100 Ωくらい

次にフォトトランジスタの回路設計をします.

そもそもトランジスタってのは電流量を制御するスイッチみたいなもので,その流す電流量を電気,というか電流で制御する機素.だから電流増幅器なんて言われてたりする.フォトトランジスタは制御入力が電流から光に代わったやつのこと.

データシートの絶対最大定格(日本語訳あってる?)を見るとコレクタ電流(Collector current)の最大値は20 mA,今回は欲しい電流値があるわけじゃないからこれを超えないようにする.

$$R_T=\frac{V_{CC}}{I_C}>\frac{5.0}{20\times10^{-3}}=250\,\mathrm{[\Omega]}$$

これを満たす抵抗ならセーフなのかな.データシートによるとトランジスタの負荷が大きいほど時間遅れが生じるから,これを気にするなら大きすぎない方がよさげ.

 

フィルタ回路の設計

脈拍の周波数は大体1 Hzだと思うけど,脈波の周波数はよく分からん.調べた感じでは脳波のα,β,γ波とかµ-rhythumとか同じで,ある周波帯域毎に意味があるようで,交感神経とか副交感神経の活動に関係あるのは0~0.4 Hzくらいっぽい.

今回は脈拍もデータとして取ってみたいので1.5 Hz以上をカットするローパスフィルタを設計します.

最も簡単なフィルタ回路は抵抗とコンデンサ1つずつから成るRC回路

いろんなフィルタ回路の設計を一瞬でしてくれる計算ツールサイトはこちら.

フィルタ計算ツール

ラプラス変換使えば速いんだけど,頭の体操がてら微分方程式で解きます.

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回路方程式

$$e_{in}(t)=Ri(t)+e_{out}(t)$$

コンデンサの式

$$q(t)=Ce_{out}(t)$$

電流の定義

$$i(t)=\frac{d q(t)}{dt}$$

これらを用いて微分方程式を組むと

$$E_{in}(t)=R\frac{d q(t)}{dt}+\frac{q(t)}{C}$$

が得られる.あとは頑張ってq(t)について解くと

$$q(t)=Ce_{in}(t)(1-exp(-\frac{1}{RC}t))$$

$$e_{out}(t)=(1-exp(-\frac{1}{RC}t))e_{in}(t)$$

って周波数応答を知りたかったんだけど,微分方程式解いてもステップ応答しか分かんないじゃん,,,

よし,ラプラス変換を用いて計算します.

回路方程式

$$E_{in}(s)=RI(s)+E_{out}(s)$$

コンデンサの式

$$Q(s)=CE_{out}(s)$$

電流の定義

$$I(s)=sQ(s)$$

これらを用いれば

$$E_{out}(s)=\frac{1}{1+RC s}E_{in}(s)$$

$$|G(j\omega)|=|\frac{E_{out}(j\omega)}{E_{in}(j\omega)}|=\frac{1}{\sqrt{1+(\omega RC)^2}}$$

カットオフ周波数は

$$|G(j\omega)|=\frac{1}{\sqrt{2}}$$>

になるときだから(電力は半分になる)

$$f=\frac{\omega}{2\pi}=\frac{1}{2\pi RC}$$

となる.今回はこの周波数を1.5 Hzにしたから

$$R=100\,\mathrm{[k\Omega]}$$

$$C=1\,\mathrm{[uF]}$$

くらいにすればよさげ(抵抗値が大きいとノイズが大きくなるので,コンデンサの入手性とのバランスを考えるとこれくらい)

このときの実際のカットオフ周波数は

$$f=1.59\,\mathrm{[Hz]}$$

出力の方にも電流が流れるから回路方程式間違えてない?と思うけど,次に出てくるオペアンプの入力端子の入力インピーダンスが大きく,電流が流れないとしてよいのでOK

増幅器の設計

 オペアンプは+と-の入力電圧差の比例倍を出力電圧にする集積回路

式にすると

$$V_{out}=A(V_{+}-V_{-})$$

 になるんだけどAがめちゃくちゃ大きいので電位差が0になるように出力電圧を調整してフィードバックする回路を作る.

今回使う回路は一般的な非反転増幅回路

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等価回路から

$$V_{out}=(1+\frac{R2}{R1})V_{in}$$

になる.とりあえず,前回の電圧変化の結果のグラフから100倍したらよさそうなので

$$R1=100\,\mathrm{[\Omega]}$$

$$R2=10\,\mathrm{[k\Omega]}$$

を予定しています.電圧のオフセットはしないといけないけど,,,

次回は実装する予定です.